経済関連

日本でハイパーインフレは起きうるのか?【日銀破綻派 vs リフレ派 vs MMT派】

コロナショック相場を受けて、Twitter上などで活発になっている議論があります。

それが、

日本でハイパーインフレは起きるのか?

というテーマです。

このテーマは、個人的には非常に興味深い……というか死活問題だと思います。

なぜなら、もしハイパーインフレが起きるとするのならば円を持っている場合ではないからです。

株や不動産に関してはインフレに合わせて動くはずですが、肝心の日本経済がズタボロになってしまえば、ダメージは免れないでしょう。

ハイパーインフレの有無というのは、このように資産配分をアセットアロケーションのレベルから考えないといけなくなるわけです。

この考え方(アセットアロケーションから見直すこと)は、どの日本株を買おうかと企業分析をすることより先にあるべきです。

もし日本株自体が投資不適格なら、どれだけ優良企業に投資していても損を免れないからです。

現在、日本では大雑把に言って3つの金融政策・財政政策的立場があります。

  1. 破綻派(緊縮派とも)
  2. リフレ派
  3. MMT派

それぞれのポジショニングをざっとまとめると、

ハイパーインフレ
(日銀破綻)の可能性
財政問題について
破綻派すでに危ない状態すぐさま健全化すべき
リフレ派現状では大丈夫まだ健全化しなくて良い
MMT派絶対にないむしろ支出を増やすべき

こんな感じです。

現時点ではリフレ派が主流、破綻派とMMT派は傍流です。

(数の問題というより、政策を担っているという観点で)

それぞれ代表的な論者(Twitterユーザー)は以下の通り。

破綻派
リフレ派
MMT派

いずれも、学歴やバックグラウンド等のしっかりされている方々です。

しかし、そういった人たちが「同じ現象を見ながら、まるで違う判断をしている」というのは、非常に興味深いと思います。

これらの議論を、我々はどう捉えれば良いのか。

以下でまとめていきます。

日本でハイパーインフレは起きるのか

まず、それぞれの主張を「ハイパーインフレや財政破綻は起きるのか」という観点から、カンタンにまとめましょう。

各々の骨子だけ。

細かいデータは、さらに次の章で確認します。

破綻派の主張

日本では、遠からずハイパーインフレ(か財政破綻)が起こる。

主な根拠は以下の通り。

  • 日本政府としての借金が約1100兆円
  • 政府債務残高の対GDP比は230%超で世界最悪
  • 国債発行残高の半分近くを日銀が買っている
  • さらに日銀は株やREITにも手を出している
  • そして、国の赤字は毎年10兆単位で増えている

これらの錬金術(財政ファイナンス)はゴマカシに過ぎず、いずれ円の信用をなくし、ハイパーインフレや財政破綻を招く。

非伝統的なリフレ派でさえ出口戦略の収拾がつかなくなっているのだから、MMTに至ってはトンデモ理論である。

円安が疾走状態のように加速すれば、一発でハイパーインフレです。ついに危機の先送り(=異次元緩和)の限界が来るということです。

藤巻健史『日本・破綻寸前』

リフレ派の主張

ハイパーインフレや財政破綻は起きうるが、今の日本の財務状況であれば大丈夫。

  • 政府の負債は大きいが、その分資産も多く、【負債-資産】をすれば、実質の負債は半分程度になる
  • さらに、政府単体でなく連結ベース(※)や日銀も加えて計算すれば、負債は実質的にほぼ無くなる
  • MMTと違い、インフレの程度も数式で定量的に予測できる(なので金融政策がベース)

※政府の子会社的組織も一緒に考慮すること
(GPIFや日本郵政など)

破綻の可能性は極めて低いので、今後も国債を増発して、今は景気拡大に全力を注ぐべし。

経済成長で将来税収が増えるし、インフレ税(インフレによる実質的な借金の目減り)もプラスされる。

日本の財務事情を正しく理解していれば、そうした財政破綻論が荒唐無稽であることがわかるはずだ。

高橋洋一『米中貿易戦争で日本は果実を得る』

MMT派の主張

自国通貨建て国債を発行している国は破綻しない。そして、インフレもコントロールできるから、ハイパーインフレは起きない。

  • 国の借金は国民の資産になるから借金ではない
  • いかなる場面も、国が先に支出する必要がある
  • 通貨流通量、インフレ率は財政支出で管理できる
  • 供給破壊でも起きない限りインフレが止まらなくなったことはない

自国通貨建ての国債を発行していて、変動相場制を採用している国は財政破綻はしえない。

インフレも、インフレ率が基準を超えてきたら増税するなりで抑え込めばいいから、ハイパーインフレは絶対起きない。

過去1世紀の間に西洋の民主的資本主義国と言われる国がハイパーインフレを経験した事例はない。さらに変動相場制の国に限定すれば、通貨危機の事例すら存在しない。

L・ランダル・レイ『MMT 現代貨幣理論入門』

またリフレ派と違い、金融政策(ゼロ金利)に関しても疑問視しています。

QEが間違った政策であることを意味するわけではない-多くのMMT派は常にゼロ金利政策を支持している-が、QEは景気を刺激しないことを理解しなければいけない。

L・ランダル・レイ『MMT 現代貨幣理論入門』

なぜ議論が噛み合わないのか

ここまで「破綻派」「リフレ派」「MMT派」の主張を見てきましたが、この3派、特に破綻派とMMT派の2派の議論(Twitter上の議論)というのは、そもそも噛み合っていないパターンが多いです。

例えば破綻派にありがちなのが「MMTは論外だから」と決めつけて、MMTを全く知らずに的外れな批判をしているパターン。

一方、MMT派にありがちなのが、「緊縮財政をやってる奴が絶対悪だ。俺は真実の理論を手に入れた」と思い込んで、そもそも経済の知識がまるで無いパターン。

リフレ派に関しては(Twitter上ではあまり目立っていませんが)「主流派経済学でありながらMMT的なことをやっている」ということもあり、基本的には両論理解していることが多いです。

なので今回の記事では、両端にいる「破綻派」と「MMT派」のすり合わせをしていきます。

必要な知識は、

  • 日銀の機能、金融政策
  • 政府の債務状況
  • MMTの主張(少し詳しく)
  • インフレが起きる原理

となります。

この4点が揃って、初めて同じ目線で議論ができるでしょう。

破綻派にせよMMT派にせよ、相手方のロジックを知らないまま反論することは不可能です。

この記事は、なるべくフェアに書いたつもりです。

なお、十分に知識のある項目は読み飛ばしていただいて構いません。

ハイパーインフレ議論のための予備知識

予備知識1:日銀の機能

簡単にまとまっているので、良ければ以下の記事をどうぞ(適切なところまで飛びます)。

基本機能と簡単な金融政策の歴史についてです。

  • 政府の銀行
  • 日銀当座預金
  • 質的・量的緩和
  • 非伝統的金融政策

などの用語をご存じであればスルーでも大丈夫です。

【個人的見解】

金融政策(や財政政策)はあくまで、経済成長や景気回復の補助的な役割のはずで、正攻法は企業の競争力や生産性を高めることです。

高度成長・バブルと経てきた日本は、政府や企業のシステム設計がゆるゆるでした。

これを正して、正当な運営をしていれば、今の日本は全く違う状況だったと思います。

(これからでも、そうしていかねばなりません)

予備知識2:政府の債務状況

思いのほか長くなったので別記事でまとめました。

  • 統合政府のバランスシート
  • 業務費用計算書における社会保障費の割合
  • 政府の換金資産額

などを把握している方は読み飛ばして大丈夫ですが、ある程度具体的にしっかりまとまっていると思います。

予備知識3:MMTの主張(少し詳しく)

特にアンチMMTの方に読んでいただきたい内容です。

分かりやすくまとめています。

予備知識4:インフレが起きる原理

基本的にインフレデフレは「需給ギャップ」によって説明できます。

需要>供給 なら インフレ
需要<供給 なら デフレ

これ自体は一定程度正しいですが、現実問題として、その他様々な要因が絡んでいることもまた事実です。

経済をさらに俯瞰で見ると、以下の事象が成り立ちます。

物価上昇=通貨下落=金利上昇=国債下落
物価下落=通貨上昇=金利下落=国債上昇

これらは全て双方向、あるいは間を飛ばしても成立します。

例えば……

【物価上昇=通貨下落】

物価が上がる状態では、貨幣の価値は下がっていく。

逆に、貨幣の価値が下がっていく状態であれば、物価は上がっていく。

【物価上昇=金利上昇】

物価が上がる状態では、金利が低いものは相手にされないので金利は上がる。

逆に、金利が上がる状態では、物価も合わせて上がる(貯金額がどんどん増えるのに、物価がそのままであるはずがない)

【通貨下落=金利上昇】

通貨価値が下落してしまう国は金利を上げざるを得ない。

逆に金利が高い国は、信用がないので通貨は安い。

【金利上昇=国債下落】

国債の利回りが上がるということは、債券価格は下がっている。

逆に、債券価格が下がるなら、利回りは上がる。

例)

  • 1年で5円手に入る債券が100円(→利回り5%)
  • 1年で5円手に入る債権が50円(→利回り10%)
  • =価格が下がると、利回りは上がる

ということで、

物価上昇=通貨下落=金利上昇=国債下落
物価下落=通貨上昇=金利下落=国債上昇

この関係性が一覧で分かると、経済の見方が非常に楽になります。

(これがこう連動してこうなるのか、というのが簡単に分かる)

ただし、いくつか注意点もあります。

注意点①

【金利を無理やり変えると、通貨は同じ方向に動く】

ほぼ唯一の例外と言えますが、金利を無理に変えると通貨も同じ方向に動きます。

原則は「通貨下落=金利上昇」で、「金利が高い国は信頼がないので通貨は安い」わけですが、例えばアメリカが利上げをすればドルが買われます。

(しかしこれは短中期の話で「長期ではドルも最終的に下げる」という説もあります)

しかし、いずれにせよ、ベースの考えは「通貨下落=金利上昇」です。

金利が(相対的に)上がる通貨は落ちていくのです。

新興国を考えれば分かりますが、例えば、南アフリカ人がランドの高い金利を捨ててまで日本円を買うのは、「ランドが金利以上に下落する」と思っているからです。

  • そんなことあるの?
  • そしたら永遠にランドは下がり続けるじゃん!

と思った方は、ランド円の長期チャートをご覧ください。

出典:https://www.fx-foreign-exchange.com/rate/zarjpy.html

何か材料がないと、こうなるわけですね。

注意点②

【物価や通貨価値は様々な要因が複雑に絡み合う】

物価上昇=通貨下落=金利上昇=国債下落
物価下落=通貨上昇=金利下落=国債上昇

この一覧はあくまで基本を書いたもので、他の様々な外的要因や他国の影響も受けます。

例えば、

  • 日本で物価が上がっても、他国でそれ以上に上がっているケース
  • 他の要素が一切変わってなくても、ただ企業が値下げするケース
  • 企業の外貨需要で通貨に影響が出るケース

など、見かけ上、一覧に当てはまらない場面もあるので、その点は注意です。

また、上の一覧の「物価下落」は必ずしも「状態としてのデフレ」を指すわけではありません。

例えばアメリカは新興国に対してドル高ですが、しっかりインフレしています(してきました)。

物価下落の圧がかかっていても、「適切に経済成長できればインフレできる」ということです。

しかし、いずれにせよ、

物価上昇=通貨下落=金利上昇=国債下落
物価下落=通貨上昇=金利下落=国債上昇

この関係性を覚えておくことは必要になります。

ハイパーインフレの可能性を検証する

ここまでの前提知識があって、ようやくハイパーインフレの可能性についての議論に入ることができます。

【ハイパーインフレ?財政破綻?】

MMT派の主張でよくあるのが、「円建て国債で日本は破綻しない」というものです。

しかし、これに関しては、破綻派も認めています。

ハイパーインフレになれば、政府も日銀も「健全化」するので、実はデフォルトはしないからです(ただし「国民の生活」は破綻します)。

なので、この項では「ハイパーインフレは起きるのか」という視点で見ていきます。

「する」と「しない」証明しやすいのはどっちか

MMTのように、「ハイパーインフレは起きない」と主張すること自体は可能ですが、その証明は実際問題としてかなり困難です。

なぜなら「ハイパーインフレしない」という命題は悪魔の証明だからです。

【悪魔の証明】

証明することが極めて困難なこと。

例えば【世界に「わん」と鳴く猫はいない】という問いに対して、

  • 「いる」と答える場合は、その猫を1匹連れてくればよいが
  • 「いない」と答える場合は、猫の声帯の形、猫と犬との生物学的関連、人間の聴覚機能、その他もろもろ……のロジック立てが必要になる

しかも、悪魔の証明にはいくらでも議論の余地が生まれてしまう。

上の例で言えば「猫の進化過程は検討したのか」など。

よって、「ハイパーインフレするかしないか」という問いに対しては、「する」側を基準に考えるのが合理的です。

具体的には、「ハイパーインフレが起きるパターンを考えて、それを全て否定できるか」ということになります。

これで暫定的ですが、「起きそうか起きなさそうか」は判断できます。

では実際に考えてみましょう。

ハイパーインフレになると仮定すると、パターンはいくつか考えられます。

先ほど見た、経済の関係性

物価上昇=通貨下落=金利上昇=国債下落

のうちのどれかが大きく動けばいいわけです。

つまり、こういうことです。

ハイパーインフレ=通貨大暴落=金利急上昇=国債大暴落

  • 通貨大暴落
  • 金利急上昇
  • 国債大暴落

のいずれかが起きれば、ハイパーインフレになります。

これらの要素を引き起こしうる存在【トリガー】として、私が思いつくものでいうと、以下が挙げられます。

【想定トリガー一覧】

  • 日本国債格下げ
  • 日銀の評価損(株式下落)
  • 日銀の評価損(国債下落)
  • 金利上昇に伴う当座預金金利上昇
  • 景気回復による現金流通量増大
  • 景気回復に伴う量的緩和停止
  • 他国破綻による財政規律の見直し
  • 地銀破綻による金融パニック
  • 日本と海外の金利差による資金流出
  • 政府財政の暴走

かなり多くなりました……。笑

大きく分けると行きつく先は、

  1. 日銀の実現損・評価損
  2. 他国や機関からの「巨額財政赤字」への疑問視

という要素になるでしょうか。

これらのうち、いくつかを使ってハイパーインフレのシナリオを想定してみましょう。

経済の専門家ではないので、数式や論文は書けません。

頭の体操と思っていただければ。

ハイパーインフレのシナリオA:景気悪化

なんとなくイメージしやすいのは、景気が悪化してそのまま日本が潰れていくパターンです。

具体的には、景気が悪化すれば日銀が保有する株の評価額が落ちます。

著しい含み損を抱えた場合、中央銀行としての信頼を失い、円が暴落する可能性があります

また、景気が悪化して財政赤字が拡大すれば、格付け会社による日本国債のランクも下がるでしょう。

よく「国債は日銀が全部買ってしまえばいい」という話がありますが、低ランクの債券ともなれば、日本国債の需要はおろか円需要や株の需要にも影響が出ますから、破綻の可能性を秘めています。

以下は思考実験的で、本当にこの通りになるとは思っていませんが、イメージの参考までに。

  • アメリカグローバル化本格離脱、米中対立激化
  • ドル急落
  • ドル円70円
  • 令和不況
  • 日銀評価損問題視
  • 円急落
  • 中国が日本投資制限
  • ヘッジファンド売り浴びせ
  • 円暴落
  • ハイパーインフレ

ハイパーインフレのシナリオB:景気回復

意外かもしれませんが、景気が回復してもハイパーインフレーションのシナリオは作れます。

例えば、景気が回復すれば金利が上がります。

普通にしてても上がりますが、景気が回復すれば量的緩和を止めないといけなくなり、国債の買い手がいなくなるため、恐らく加速度的に上がります。

(量的緩和を止めなければ良いじゃないか、という意見がありそうですが、その場合完全にバブルになりますし、現金流通量にも歯止めがかからなくなりハイパーインフレ一直線です)

金利が上がれば、国債の評価額は下がりますから、日銀に評価損が発生します。

また、当座預金の政策金利も上げざるを得ないので、実現損も発生していきます。

「当座預金の金利を上げない」というウルトラCがあるのかは分かりませんが、その場合は当座預金にお金を置いておく必要がないので、現金流通量が爆増して、確実にインフレを起こします。

例によって、頭の体操も。

  • コロナによる財政出動が世界的に加速
  • 世界規模で景気V字回復
  • 過熱化してバブル形成
  • 世界的に金利上昇
  • 日本も追従したいが、日銀の評価損を懸念
  • 日本は異例の金利据え置き政策
  • バブルに歯止めがかからず
  • 量的緩和の当座預金が流出
  • 円安が急激に進展
  • 海外との金利差による円売りも止まらず
  • ハイパーインフレ

ハイパーインフレのシナリオC:景気関係なく

日本の景気動向にかかわらず、ハイパーインフレになる可能性も考えられます。

例えば、日本の地銀は長引く低金利政策の影響を受け、ジャンク債と呼ばれるハイリスクな金融商品に手を出しています。

これがまとめて焦げ付いた場合、地銀の大量破綻を引き起こし、金融パニックに繋がる恐れがあります。

あるいは他国で財政破綻、ハイパーインフレが発生した際に、債務残高が圧倒的な日本の危険性がピックアップされる可能性も否定できません。

ここでは、「MMTが正しい」「MMTが認められた」世界でのハイパーインフレの可能性をシミュレーションしてみましょう。

  • MMTは正しいので、インフレになるまで財政を拡大する
  • インフレ率2%で順調に経済成長もして、みんなハッピー
  • しかし、ある時「理論上インフレ率は4%まで可能」と主張する政党が現れる
  • 与党は汚職が続き、政権陥落
  • 4%MMTでインフレが急速に進む
  • 高齢者から「年金制度がインフレに追いついていない」と不満
  • 高齢者は一番の票田なので、新与党は財政支出を増大
  • 野党も新たに理由を付けてMMTの拡大解釈を図る
  • 政治の暴走止まらず
  • ハイパーインフレ

あるいは、もっと単純に

  • 日本がMMTに成功する
  • 全世界が後追い
  • いかに国債発行の上限ギリギリを攻められるかで国の優劣が決まり、行き過ぎる国家が現れる
  • ハイパーインフレ
各シナリオをふまえての結論
  • インフレは単純な需給ギャップだけでは決まらない
  • 戦争や内乱による供給破壊以外にも、(ハイパー)インフレを招く要素は考えられる
  • ただし、だからと言って「必ず起きる」「起きる可能性が高い」かは別問題

このようにまとめることができるでしょう。

破綻派とMMT派の見解の相違はどこから生まれているのか

前項の議論をふまえると、現時点では以下の3点が考えられます。

  1. 「ハイパーインフレ=通貨大暴落=金利急上昇=国債大暴落」をコントロールできるか
  2. そもそも国は借金を返す必要があるか、中央銀行の健全性が必要かどうか
  3. イレギュラーな事態をどこまで想定するか

これらをそれぞれ見ていきましょう。

「ハイパーインフレ=通貨大暴落=金利急上昇=国債大暴落」をコントロールできるか

ハイパーインフレ
のコントロール
破綻派不可能
リフレ派現状では危険性は低い
MMT派可能

MMTの主張で多く見られるのが「インフレは抑えられる・金利も抑えられる(国債を買えばいい)」というものです。

しかし実際は円の信認や、世界的な金利の流れも関係してきます。

そのあたりまでふまえて、総合的にどう判断するかが重要です。

そもそも国は借金を返す必要があるか、中央銀行の健全性が必要かどうか

借金返済、中央銀行健全性
破綻派必要
リフレ派最終的には必要
MMT派不要

これに関しては、証明が異様に難しいので、実は数学的な理論の話というより、「貨幣とは何か」「経済とは何か」「信用とは何か」という、思想哲学の話です。

なので、これに関して「真実」を述べることは21世紀現在では不可能です。

しかし、ひとつ確実に言えることは

「借金は返す必要がある」と思っている人が主流のうちは、借金は返す必要がある

ということです。

ゲームのプレイヤーの大多数が「借金を返さない国は破綻する」と思って参加しているゲームでは、「借金を返さない国」はいずれ必ず破綻します。

しかし、それが「いつになるか」「どの程度の規模になるか」は、各人の行動基準、借金の許容度によって変わってくるので、断言できません。

もしかしたら1000年後かもしれません。

その場合は、現代に生きる我々には関係ないので、「借金は返さなくていい」と主張すること自体は可能です。

また、プレイヤーの大多数が「借金を返さない国は破綻する」と頭では思っていても、心では「破綻すると困るから、破綻してほしくない」と思っていれば、許容度が相当広くなる(事実上「破綻しない」レベルになる)かもしれません。

(バブルがなかなか崩壊しないのと同じですね)

この話は、中央銀行の健全性に関しても当てはまります。

この問いはそれほどまでに心理的なものであり、現在の経済心理学とも違う、新たなカイジ的なジャンルが必要なのかもしれません。

イレギュラーな事態をどこまで想定するか

世の中には全くもって予想だにしなかったことが結構起きます。笑

上でも見ましたが、例えば、

  • 何らかの原因による供給破壊
  • 中国による日本投資制限
  • 金利据え置きで当座預金流出
  • 財政支出の過激化

などです。

これらの例自体は「そんなことあり得ない」と切り捨てることも可能かもしれませんが、重要なのは「予想外のことは起こりえる」ということです。

後は、この「予想外の出来事」をどう考えるかです。

予想外の出来事を確率で表すことはできませんから、これも個人の感覚の範疇の問題となります。

起こる確率、起きた場合の被害、対応策の有無など、総合的にどう考えるか、という話になります。

結論

ハイパーインフレが起きるかどうかは分からない。笑

元も子もありませんが、そういうことです。

ハイパーインフレが起きるかは【分からない】ので仮定の話をしよう

予兆はある?

全く何の予兆もなく「寝て起きたら円が紙屑になっている」という可能性はほぼ無いと思いますので、ご心配されている方はご安心ください。笑

しかし、予兆を予兆だと気付けなければ「いきなり来た」と感じることになると思います。

例えば、上の「頭の体操」で見た、

  • 令和不況
  • バブル加熱

などが予兆ですね。

しかし、ひとたび「トリガー」が引かれれば、急ピッチに進む可能性はあります。

元来、人間は経済分野においてパニックを起こしがちですし、昨今はアルゴリズム投資や高速取引とやらでその勢いは加速しています。

例えば、2020年コロナショックでダウ平均は28992ドル(ほぼ高値)から18591ドルまでわずか1か月で動きました。

割安として買いが入る株式でもこのペースですから、円の価値に対して明確にNG判断が下されれば、「トリガー」が引かれてから、わずか数日で暴落していく可能性は否定できません。

生活はどうなる?

これに関しては別記事でまとめていますので、そちらでご確認ください。

インフラ悪化や生活水準の低下、リストラ、年金カットなどは避けられないでしょう。

しかし、

  • 日本国が解散したり
  • アメリカや中国に物理的に占領されたり
  • アフリカ並みの治安になったり

することはないと思われます。

(ただし、ドサクサの尖閣奪取などは注意する必要があります)

対策に有効なオススメの金融商品(私見)

これに関しても別記事でまとめています。

基本的に、ハイパーインフレは「来るか分からない」ので、アセットアロケーションレベルで対応しておくべき、というのが私の考えです。

本質的に、経済には変数が多すぎるので、読み通すことはできません。

囲碁はAIが人間に勝つ時代になりましたが、経済は1週間後の株価を予想することすら不可能です。

なので複数のシナリオを想定しておき、どれが来ても儲かるようなアセットアロケーション、ポートフォリオを組む必要があります。

個人的見解

「日銀破綻vsMMT」論争に対する私の見解をまとめると、以下のようになります。

MMTの前段部分は正しい
  • 財政政策の有用性(デフレ脱却)はMMTの言う通り
  • バブル後の日本の低迷と財政出動の少なさの論議には説得力もある
  • 政府の赤字が民間にお金を生むのも、基本的にはその通り
  • (ただし、無条件で景気が回復するわけではない)
しかし、MMTの結論は間違い
  • 「赤字が望ましいこと」と「赤字が許容されること」は別問題
  • 仮に、自由に財政政策が打てて、しばらくはそれが許容されたとしても、いずれ政治が暴走する
それでも金融緩和と財政政策はやるしかない
  • MMTは許容できないが、日本としては今さら緊縮財政には引き返せない
  • 「財政規律」の必要性は発信しながらも、成長戦略にかけるしかない
  • Xデーが来るか来ないかは運否天賦
意外と耐えると思っている
  • 日本が途上国ならとっくに見限られて破綻しているはず
  • しかし、世界第3位の経済大国は究極の「too big to fail」
  • しかも規模に差はあれど、アメリカや各国もやっていることは変わらない
  • これらの理由から、心理的要因も働いて、なんやかんや理由をつけて「財政ファイナンス」は正当化される
  • 「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。何故踊るかなんて考えちゃいけない」(村上春樹)
  • 日銀が評価損を抱え続けても許される可能性さえ十分想定される(あるいは政府が資金を入れて解決を図ることが許される)
ただし、常に破綻と隣り合わせ
  • それでも、根本的にハイパーインフレの可能性を消し去ることはできない
  • そしてそれに備える必要はある
  • (ただし1年後かもしれないし、300年後かもしれない)
  • どこまで「耐える」かで、爆発したときの被害が決まる
  • 最悪のケースでは世界中を巻き込んだ「政治経済のシステム」「国と通貨の信認」ごと、正当性が問われる可能性も
解決の道筋は……
  • これらの危機を現状のリフレ政策のもと、のらりくらりとかわし続ける
  • その間に、日本を「正しい形」で経済成長させる
  • 「正しい形」とは、金融や財政で見かけ上の改善をするのではなく、現状の日本のあまりに非効率な社会システムを変革し、民間の力で生産性を上げること
  • (つまり、私を含むこの記事をお読みの皆さんが今より効率的かつ付加価値を生むように働かないといけないということです)
  • 財政支出も「社会保障」「年金」といった再生産性のない(高齢者が使うか貯め込んでオシマイの)分野はガリガリ削って、投資性の高い分野に割り振る
  • これらの戦略で、公債残高を対GDP比で一定(せめて微増)程度に収める

これが、私の「日銀破綻vsMMT」論争に対する見解となります。

MMTが議論の前提にしている部分は正しいと思います。

デフレの脱却には財政支出などは有効です。

しかし、財政赤字の拡大はハイパーインフレの確率を多少なりとも確実に上げます。

その意味で破綻派もMMT派も正しさを持ち合わせており、この2つは矛盾しません。

繰り返しになりますが、本来であれば、過剰な量的緩和に走る前に、公的部門、民間含めてあらゆるセクターで効率化を図り、競争力をつけ、単純な意味で国力をつけるべきでした。

また、財政支出もそのような分野に特化すべきでした。

行かなくていい老人の病院代を肩代わりし、これから目減りすることが確実な年金を満額+αで支給し続けるシステムが問題なのです。

しかも、この年金は何ら効率的に使われることはありません。

ただただ浪費されるか、タンスの奥深くに格納されるだけです。

(その裏で、前途有望な若者の学費や、優秀な研究者の研究費、国の宝である子供たちに使われるお金がカット、あるいは制限されているのです)

とまあ、最後は話が少し逸れましたが、「財政破綻」「リフレ」「MMT」に関してのまとめは以上です。

それぞれの主張、論点などの把握に役立てば幸いです。

オススメ参考サイト・書籍

破綻派

財務省は政府の一部なので、ハイパーインフレになるとは言ってませんが、本質的には緊縮推進の破綻派(緊縮派)という認識で良いと思います。

どれでもない人

塚崎さんは「破綻するけど破綻しない」という面白い主張です。笑

個人的には、ここまで綺麗にはハマらないだろうし、仮にこの通りになったとしても、日本経済に影響はあるだろうなとは思います。

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